てんかん患者に抗うつ薬を処方する際、添付文書で禁忌となっている薬剤を正確に把握することは薬剤師の重要な責務です。四環系・NaSSA・SNRI・SARI系抗うつ薬の禁忌区分の違いを理解し、適切な疑義照会ができるようになりましょう。
クイズの内容に問題がある場合や、改善のご提案がございましたら、お気軽にお知らせください。
📧 内容についてお問い合わせ55歳男性。10年前からてんかんの診断を受け、現在はカルバマゼピン600mg/日でコントロール良好。最近、仕事のストレスから抑うつ症状が出現し、精神科を受診した。
既往歴:てんかん(部分発作)、高血圧症
現在の処方:カルバマゼピン錠200mg 3錠(分3毎食後)、アムロジピン錠5mg 1錠(朝食後)
精神科医師より、うつ病と診断され抗うつ薬の処方が検討されている。
この患者に対して、添付文書上「禁忌」と明記されており、処方された場合は必ず疑義照会が必要となる抗うつ薬はどれか?
うつ病・うつ状態
抗うつ剤の投与により、24歳以下の患者で、自殺念慮、自殺企図のリスクが増加するとの報告があるため、本剤の投与にあたっては、リスクとベネフィットを考慮すること。
うつ病・うつ状態
※てんかん患者は禁忌ではなく慎重投与
うつ病・うつ状態
※てんかん患者は禁忌ではなく慎重投与
マプロチリン塩酸塩は四環系抗うつ薬に分類され、主にノルアドレナリン再取り込み阻害作用により抗うつ効果を発揮します。
マプロチリンは橋頭位にエチル基を有する四環系構造を持ち、この構造が以下の特性をもたらします:
マプロチリンが痙攣を誘発しやすい理由:
血中濃度 | 痙攣リスク | 臨床的意義 |
---|---|---|
<200ng/mL | 低い | 治療域内では比較的安全 |
200-300ng/mL | 中等度 | 注意深い観察が必要 |
>300ng/mL | 高い | 痙攣発作のリスク著明に上昇 |
パラメータ | 値 | 臨床的意義 |
---|---|---|
生物学的利用率 | 約70% | 経口投与で良好な吸収 |
血漿蛋白結合率 | 88% | 薬物相互作用の可能性 |
半減期 | 27-58時間 | 1日1回投与が可能 |
活性代謝物 | デスメチルマプロチリン | 親化合物と同等の活性 |
薬剤 | NA再取り込み阻害 | 5-HT再取り込み阻害 | 痙攣リスク |
---|---|---|---|
マプロチリン | +++ | + | 高い |
ミルタザピン | α2遮断で増加 | 5-HT2,3遮断 | 低い |
デュロキセチン | ++ | +++ | 低い |
トラゾドン | + | ++ | 低い |
(+の数は作用の強さを示す)
通常成人には、マプロチリン塩酸塩として1日25~75mgを2~3回に分割経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日最高投与量は225mgとする。
患者背景 | 開始用量 | 維持用量 | 最大用量 |
---|---|---|---|
成人(65歳未満) | 25mg/日 | 50-150mg/日 | 225mg/日 |
高齢者(65歳以上) | 10-25mg/日 | 25-50mg/日 | 75mg/日 |
肝機能障害 | 25mg/日 | 個別設定 | 通常の2/3程度 |
腎機能障害 | 25mg/日 | 通常量可 | 225mg/日 |
急激な中止により以下の離脱症状が出現することがある:
→ 4週間以上かけて漸減することが推奨される
以下の場合はTDM(血中濃度モニタリング)を考慮:
血中濃度 | 臨床的意義 |
---|---|
50-200ng/mL | 治療域(マプロチリン+活性代謝物) |
>300ng/mL | 副作用リスク上昇(特に痙攣) |
マプロチリンは四環系抗うつ薬の中で最も痙攣誘発リスクが高く:
特に閉塞隅角緑内障では:
セロトニン症候群様の重篤な副作用:
薬剤 | てんかん | 緑内障 | MAO阻害剤 | その他特記 |
---|---|---|---|---|
マプロチリン | 禁忌 | 禁忌 | 禁忌 | 心筋梗塞回復初期 |
ミルタザピン | 慎重投与 | 禁忌ではない | 禁忌 | - |
デュロキセチン | 慎重投与 | 禁忌 | 禁忌 | 重篤な肝・腎障害 |
トラゾドン | 慎重投与 | 禁忌ではない | 禁忌 | - |
処方監査時は以下を必ず確認:
時期 | 注意事項 | 対応 |
---|---|---|
開始~1週間 | めまい、ふらつき | 就寝前投与の検討 |
1~2週間 | 口渇、便秘 | 水分摂取励行 |
2~4週間 | 効果発現の確認 | 効果不十分時は増量 |
投与を中止する場合は、以下の離脱症状に注意:
→ 4週間以上かけて段階的に減量
本剤投与中の患者には、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。
問題点 | 理由 | 対策 |
---|---|---|
起立性低血圧 | 血管反応性の低下 | 低用量開始、臥位血圧測定 |
抗コリン作用 | 感受性亢進 | 便秘、排尿状態の確認 |
過鎮静 | 代謝能低下 | 日中の活動性評価 |
薬剤 | 相互作用 | 対応 |
---|---|---|
中枢神経抑制剤 | 相互に作用増強 | 用量調節 |
抗コリン作用薬 | 抗コリン作用増強 | 副作用モニタリング |
CYP2D6阻害薬 | マプロチリン血中濃度上昇 | 減量考慮 |
降圧剤 | 降圧作用増強 | 血圧モニタリング |
分類 | 5%以上 | 0.1~5%未満 | 頻度不明 |
---|---|---|---|
精神神経系 | 眠気、めまい | 頭痛、不眠、振戦 | せん妄、幻覚 |
抗コリン作用 | 口渇 | 便秘、排尿困難 | 尿閉、腸管麻痺 |
循環器 | - | 起立性低血圧 | 心電図異常 |
消化器 | - | 悪心、食欲不振 | 嘔吐、下痢 |
過敏症 | - | 発疹 | 光線過敏症 |
肝臓 | - | AST・ALT上昇 | 黄疸 |
その他 | - | 倦怠感、体重増加 | 発汗、脱毛 |
症状 | 対処法 |
---|---|
口渇 | ・無糖ガムを噛む |
便秘 | ・食物繊維の摂取 |
排尿困難 | ・腹部マッサージ |
検査項目 | 頻度 | 確認事項 |
---|---|---|
血算 | 投与開始時、その後定期的 | 白血球数、好中球数 |
肝機能 | 投与開始時、1ヶ月後、その後3ヶ月毎 | AST、ALT、γ-GTP |
心電図 | 投与開始時、用量変更時 | QT延長、不整脈 |
血清ナトリウム | 症状出現時 | SIADH の確認 |
薬剤名 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
---|---|---|
MAO阻害剤 | 発汗、不穏、全身痙攣、異常高熱、昏睡等があらわれることがある。 | MAO阻害剤の投与により、脳内モノアミン濃度が高まり、本剤との併用により、さらにモノアミン神経伝達が亢進すると考えられる。 |
薬剤 | 相互作用 | 対策 |
---|---|---|
バルビツール酸誘導体 | 相互に中枢神経抑制作用を増強 | ・用量調節 |
薬剤例 | 増強される症状 | モニタリング項目 |
---|---|---|
・抗ヒスタミン薬 | ・口渇 | ・排尿状態 |
薬剤 | 相互作用の程度 | 対応 |
---|---|---|
パロキセチン | 強い阻害(3-4倍上昇) | マプロチリン50%減量 |
キニジン | 強い阻害 | 併用避ける |
デュロキセチン | 中等度阻害 | 注意深く観察 |
テルビナフィン | 中等度阻害 | 副作用モニタリング |
→ 効果減弱の可能性、増量が必要な場合あり
薬剤分類 | 相互作用 | 注意事項 |
---|---|---|
降圧剤 | 降圧作用増強 | ・臥位/立位血圧測定 |
アドレナリン作動薬 | 作用増強 | ・心電図モニタリング |
重要度 | 薬剤 | 対応 |
---|---|---|
高 | MAO阻害剤(禁忌) | 併用禁止または大幅な用量調節 |
中 | 中枢神経抑制剤 | 注意深いモニタリング |
低 | NSAIDs | 通常の観察で可 |
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※ 重要な注意事項
本クイズは教育目的で作成されています。実際の診療・調剤には必ず最新の添付文書をご確認ください。
最終確認日:2025/7/16