吸入ステロイド薬フルタイドとCYP3A4阻害薬(特にリトナビル)との重篤な相互作用、医原性クッシング症候群の発症機序、適切な代替薬選択を含む上級レベルの臨床問題です。
クイズの内容に問題がある場合や、改善のご提案がございましたら、お気軽にお知らせください。
📧 内容についてお問い合わせ45歳男性(体重70kg)、HIV感染症と気管支喘息を有する患者。現在の処方:リトナビル100mg 1日2回(抗レトロウイルス薬のブースターとして)、ダルナビル800mg 1日1回、その他の抗HIV薬。
最近、喘息コントロール不良のため、呼吸器内科からフルタイド200ディスカス 1回1吸入 1日2回が追加処方されました。
処方開始から2ヶ月後、患者は顔面の浮腫、中心性肥満、筋力低下を訴えて来院。血液検査で早朝コルチゾール値 0.8μg/dL(基準値:4.0-18.3μg/dL)と著明に低下していました。
この患者の病態と今後の対応について、最も適切な説明と提案はどれですか?
成人及び小児の気管支喘息の長期管理において、以下の場合に適応となります:
フルタイド単剤での適応はありませんが、配合剤(アドエア®)として:
2024年、FDAはフルチカゾンプロピオン酸エステル点鼻薬について、鼻ポリープを伴わない慢性副鼻腔炎への適応を承認しました。新しい呼気送達システム(EDS)により、標準的な点鼻薬では到達困難な副鼻腔ドレナージ経路への薬剤送達が可能となりました。
フルチカゾンプロピオン酸エステルは、強力な合成副腎皮質ステロイドで、主に抗炎症作用により喘息症状を改善します。
フルチカゾンは細胞質内のグルココルチコイド受容体(GR)に結合し:
標的細胞 | 作用 | 臨床的意義 |
---|---|---|
好酸球 | アポトーシス促進、活性化抑制 | 気道炎症の軽減 |
T細胞 | サイトカイン産生抑制 | アレルギー反応の抑制 |
マスト細胞 | 脱顆粒抑制 | 即時型反応の軽減 |
気道上皮細胞 | ムチン産生抑制、繊毛機能改善 | 気道分泌の正常化 |
血管内皮細胞 | 透過性亢進の抑制 | 気道浮腫の軽減 |
しかし、CYP3A4阻害薬との併用時は、この代謝が阻害され全身曝露が著明に増加します。
通常、成人にはフルチカゾンプロピオン酸エステルとして1回100μgを1日2回吸入投与する。
なお、症状により適宜増減するが、1日の最大投与量は800μgを限度とする。
重症度 | 推奨用量 | 最大用量 |
---|---|---|
軽症持続型 | 100-200μg/日 | 400μg/日 |
中等症持続型 | 200-400μg/日 | 800μg/日 |
重症持続型 | 400-800μg/日 | 800μg/日 |
通常、小児にはフルチカゾンプロピオン酸エステルとして1回50μgを1日2回吸入投与する。
なお、症状により適宜増減するが、1日の最大投与量は200μgを限度とする。
結核性疾患の患者[症状を増悪させるおそれがある]
リトナビル等の強力なCYP3A4阻害薬を投与中の患者
海外では多数の症例報告があり、FDAやメーカーも併用を推奨していません。日本の添付文書には記載がありませんが、極めて重要な禁忌事項です。
阻害薬の強度 | 薬剤例 | 推奨対応 |
---|---|---|
強力な阻害薬 | リトナビル、コビシスタット、イトラコナゾール | 併用を避ける |
中程度の阻害薬 | エリスロマイシン、フルコナゾール、ベラパミル | 慎重に併用、減量考慮 |
弱い阻害薬 | シメチジン、ジルチアゼム | 通常用量で可、モニタリング |
2024年10月に発表されたJGL2024では、初めてクリニカルクエスチョン(CQ)が策定され、吸入ステロイド使用時の以下の点が強調されています:
分類 | 1〜5%未満 | 1%未満 | 頻度不明 |
---|---|---|---|
口腔・呼吸器 | 嗄声、口腔・咽頭カンジダ症 | 咽喉頭疼痛・不快感、咳 | 味覚異常、口内乾燥 |
消化器 | - | 悪心、腹痛、食道カンジダ症 | - |
精神神経系 | - | 頭痛 | 睡眠障害、不安、易刺激性、攻撃性 |
皮膚 | - | 皮疹、蕁麻疹 | 挫傷、皮膚萎縮 |
内分泌 | - | - | 副腎抑制、骨密度減少 |
その他 | - | 動悸 | 発熱、胸痛、浮腫 |
以下の場合、全身性副作用(クッシング症候群、副腎抑制等)のリスクが高まります:
予防法 | 効果 | 推奨度 |
---|---|---|
吸入後のうがい(2回以上) | 90%以上の薬剤除去 | 必須 |
食前吸入+食事 | 食物による除去効果 | 推奨 |
スペーサー使用(MDI) | 口腔内沈着の減少 | 推奨 |
吸入後の歯磨き | 物理的除去 | 有効 |
口腔カンジダ症発現時は、抗真菌薬(ミコナゾールゲル等)の使用を考慮します。
薬剤名 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
---|---|---|
CYP3A4阻害薬 | 副腎皮質ステロイド剤の作用が増強されるおそれがある。 | CYP3A4による代謝が阻害されることにより、フルチカゾンの血中濃度が上昇する可能性がある。 |
併用薬 | フルタイドへの影響 | 報告されている副作用 | 推奨対応 |
---|---|---|---|
リトナビル | AUC:350倍 | クッシング症候群 | 併用を避ける |
コビシスタット | リトナビルと同程度 | 同上 | 併用を避ける |
イトラコナゾール | AUC:1.9倍 | 副腎機能抑制 | 減量または代替薬考慮 |
ケトコナゾール | AUC:1.9倍 | 全身性ステロイド作用 | 慎重に併用 |
エリスロマイシン | 中程度の上昇 | 軽度の副腎抑制 | モニタリング強化 |
薬剤分類 | 相互作用 | 臨床的対応 |
---|---|---|
β遮断薬(非選択性) | β2刺激薬の作用減弱 | 選択的β1遮断薬の使用 |
利尿薬 | 低カリウム血症の増強 | 電解質モニタリング |
MAO阻害薬 | 血圧上昇のリスク | 2週間以上の間隔 |
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※ 重要な注意事項
本クイズは教育目的で作成されています。実際の診療・調剤には必ず最新の添付文書をご確認ください。
最終確認日:2025/1/25