アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の先駆けであるロサルタンについて、活性代謝物への変換、CYP2C9遺伝子多型の影響、尿酸低下作用を踏まえた複雑な症例での薬物選択と投与設計を問う上級レベルのクイズです。
クイズの内容に問題がある場合や、改善のご提案がございましたら、お気軽にお知らせください。
📧 内容についてお問い合わせ72歳男性(体重58kg)、高血圧・糖尿病性腎症・高尿酸血症を有する患者。現在の処方:メトホルミン500mg 1日2回、グリメピリド1mg 1日1回、フロセミド20mg 1日1回。
検査値:血圧158/92mmHg、eGFR 42mL/min/1.73m²、血清クレアチニン1.5mg/dL、尿蛋白(2+)、血清尿酸値8.2mg/dL、血清カリウム4.2mEq/L
過去にACE阻害薬で空咳のため中止歴あり。担当医はARBの導入を検討している。なお、この患者はCYP2C9遺伝子検査で*1/*3(IM:intermediate metabolizer)と判明している。
この患者へのARB選択と投与設計について、最も適切な提案はどれですか?
成人および小児(6歳以上)の高血圧症に適応があります。
ただし、以下の状態の患者に限ります:
本適応は、ACE阻害薬投与を含む通常の降圧治療を行ってもなお血圧のコントロールが不十分な場合に限られます。
糖尿病性腎症に対しては、通常の降圧治療を行ってもなお血圧のコントロールが不十分な場合に本剤の投与を考慮すること。また、本剤投与後も血圧コントロールが不十分な場合は、カルシウム拮抗薬、利尿薬等の他の降圧薬との併用を考慮すること。
ロサルタンとその活性代謝物E-3174は、アンジオテンシンII(AII)タイプ1(AT1)受容体に選択的に結合し、AIIの作用を特異的に阻害します。
ロサルタンは経口投与後、主に肝臓で以下の経路により代謝されます:
代謝酵素 | 代謝産物 | 割合 | 活性 |
---|---|---|---|
CYP2C9 | E-3174(カルボン酸体) | 約14% | 未変化体の10-40倍 |
CYP3A4 | E-3174およびその他 | 主要経路 | 同上 |
グルクロン酸抱合 | グルクロン酸抱合体 | 一部 | なし |
ロサルタンは他のARBと異なり、尿酸トランスポーターURAT1を阻害する特性があります:
この作用は、ロサルタン分子のテトラゾール基とクロライド基の特異的な立体配置によるものと考えられています。
成人
小児(6歳以上)
患者集団 | 推奨事項 |
---|---|
腎機能障害 | 血清クレアチニン3.0mg/dL以下では用量調節不要 |
肝機能障害 | 軽度〜中等度:用量調節不要 |
高齢者 | 低用量(25mg)から開始 |
利尿薬併用 | 25mgから開始(血管内脱水のリスク) |
高カリウム血症の患者(腎機能障害、副腎機能低下等により高カリウム血症を呈している患者)では、高カリウム血症を増悪させるおそれがあるため、原則として投与しないこと。やむを得ず投与する場合は、血清カリウム値のモニタリングを頻回に行うこと。
リスク因子 | モニタリング頻度 | 対策 |
---|---|---|
腎機能障害 | 開始後2週、その後月1回 | K≥5.5mEq/Lで減量・中止検討 |
糖尿病 | 月1回 | 食事指導強化 |
K保持性利尿薬併用 | 開始後1週、その後2週毎 | 併用回避または厳重管理 |
NSAIDs併用 | 併用開始後2週 | 腎機能も含めて評価 |
分類 | 1%以上 | 0.1〜1%未満 | 頻度不明 |
---|---|---|---|
精神神経系 | 頭痛、めまい | 不眠、眠気 | しびれ感、耳鳴、不安感、抑うつ状態 |
循環器 | - | 低血圧、動悸 | 起立性低血圧、胸痛、頻脈、徐脈 |
消化器 | - | 口渇、胃不快感 | 嘔気、嘔吐、食欲不振、下痢 |
肝臓 | ALT上昇 | AST上昇、LDH上昇 | 肝機能障害 |
腎臓 | - | BUN上昇、クレアチニン上昇 | - |
皮膚 | - | 発疹、そう痒 | 蕁麻疹、紅斑、光線過敏症 |
血液 | - | 貧血 | 白血球減少、血小板減少 |
その他 | - | 咳嗽、倦怠感 | 筋肉痛、関節痛、発熱、浮腫、CK上昇 |
薬剤名 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
---|---|---|
アリスキレンフマル酸塩 | 非致死性脳卒中、腎機能障害、高カリウム血症及び低血圧のリスク増加 | レニン-アンジオテンシン系阻害作用が増強される可能性がある |
薬剤名 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
---|---|---|
カリウム保持性利尿薬 | 血清カリウム上昇、高カリウム血症を起こすおそれがある | 本剤のアルドステロン分泌抑制によりカリウム貯留作用が増強する |
アリスキレンフマル酸塩 | 腎機能障害、高カリウム血症及び低血圧を起こすおそれがある(eGFR 60mL/min/1.73m²未満の場合は治療上やむを得ない場合を除き併用は避ける) | レニン-アンジオテンシン系阻害作用が増強される可能性がある |
ACE阻害薬 | 急性腎障害を含む腎機能障害、高カリウム血症及び低血圧を起こすおそれがある | レニン-アンジオテンシン系阻害作用が増強される可能性がある |
非ステロイド性抗炎症薬 | 本剤の降圧作用が減弱されるおそれがある。腎機能障害のある患者では急性腎障害を起こすおそれがある | NSAIDsのプロスタグランジン合成阻害作用により、本剤の降圧作用が減弱される。腎血流量が減少する |
リチウム製剤 | リチウム中毒が報告されている | 本剤のナトリウム排泄作用により、リチウムの蓄積が起こると考えられている |
グレープフルーツジュース | 降圧作用が減弱されるおそれがある | グレープフルーツジュースに含まれる成分がCYP3A4を阻害し、活性代謝物の生成が抑制される可能性がある |
以下の薬剤はCYP2C9を阻害するため、ロサルタンから活性代謝物への変換が低下する可能性があります:
ただし、CYP3A4による代替経路があるため、臨床的に問題となることは少ないと考えられています。
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※ 重要な注意事項
本クイズは教育目的で作成されています。実際の診療・調剤には必ず最新の添付文書をご確認ください。
最終確認日:2025/1/24