「薬剤師はいらない」は本当か?将来性とAI時代に生き残る具体策を解説
「薬剤師はいらない」と言われる理由を徹底解説。2025年最新データをもとに、AIや自動化の影響、需給バランス、今後求められるスキルまで網羅。将来性を高める具体的なキャリア戦略を現役薬剤師の視点でお伝えします。

「薬剤師はいらない」という声に不安を感じていませんか?
「薬剤師はいらない」「将来なくなる職業だ」といった声を耳にして、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
AIや調剤ロボットの進化、登録販売者制度の普及、そして薬剤師数の増加。確かに、薬剤師を取り巻く環境は大きく変化しています。
しかし結論からお伝えすると、薬剤師の仕事がすべてなくなることはありません。ただし、求められる役割やスキルは確実に変化しています。
この記事では、「薬剤師はいらない」と言われる背景を整理した上で、2025年最新のデータをもとに薬剤師の需給状況を解説します。さらに、AI時代でも必要とされる薬剤師になるための具体的なスキルとキャリア戦略をお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。
「薬剤師はいらない」と言われる5つの理由
まず、なぜ「薬剤師はいらない」という声が出てくるのか、その背景を整理しておきましょう。理由を正しく理解することが、対策を考える第一歩です。
理由1:業務内容が患者さんから見えにくい
薬剤師の仕事は、患者さんから見えにくい部分が多いのが実情です。
処方箋を受け取ってから患者さんに薬を渡すまでの間、薬剤師は以下のような専門的な確認作業を行っています。
- 複数の薬の飲み合わせ(相互作用)のチェック
- 患者さんの腎機能や肝機能に応じた用量調節の確認
- アレルギー歴や既往歴との照合
- 必要に応じた医師への疑義照会
しかし、これらの確認作業で問題がなければ、患者さんの目には「処方箋どおりに薬を集めて渡しているだけ」と映りがちです。薬剤師の専門性が十分に伝わっていないことが、「いらない」という誤解につながっている面があります。
理由2:対物業務の自動化と非薬剤師への業務移管
2019年4月の厚生労働省通知(0402通知)により、薬剤師の指示のもとであれば、薬剤師以外のスタッフでも一部の調剤業務を行えるようになりました。
具体的には、以下の業務が非薬剤師でも実施可能です。
- 処方箋に記載された医薬品を棚から取り揃える行為(ピッキング)
- 一包化した薬剤の数量確認(薬剤師の監査前)
- 調剤機器の清掃や消耗品の補充
ただし、軟膏剤の混合や散剤の計量など、専門的な判断を要する業務は引き続き薬剤師にしか認められていません。
この規制緩和は「薬剤師を不要にするため」ではなく、対物業務を効率化し、薬剤師が服薬指導などの対人業務に注力できるようにするためのものです。
理由3:AIや調剤ロボットの技術進歩
調剤ロボットやAIによる処方監査システムの導入が進んでいます。最新の調剤ロボットは、処方データを入力するだけで医薬品の選択から分包までを自動で行えるようになりました。
また、AIは膨大な医薬品情報をリアルタイムで解析し、相互作用や禁忌、副作用リスクを瞬時にチェックできます。「人間よりAIのほうがミスなく正確」という印象から、「薬剤師はいらない」という意見につながっている側面があります。
ただし、後述するように、AIには得意な領域と苦手な領域があり、薬剤師の仕事すべてを代替することはできません。
理由4:医薬分業のメリットが患者さんに伝わりにくい
日本で本格的に医薬分業が始まったのは1974年のことです。医師が処方し、薬剤師が調剤するという分業体制には、以下のメリットがあります。
- 複数の医療機関からの処方を一元管理できる
- 重複投薬や相互作用を防げる
- 処方内容を客観的にチェックできる
しかし患者さんの立場からすると、「クリニックで直接薬をもらったほうが便利」「薬局で再度説明するのが手間」と感じることも少なくありません。また、調剤料や薬学管理料が別途かかることへの不満も、薬剤師不要論につながっている可能性があります。
理由5:薬剤師数の増加と需要の変化
厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、2022年12月時点の薬剤師数は約32万4,000人で、2年前と比べて約1,700人増加しています。
一方、医師・歯科医師・薬剤師の有効求人倍率は、2012年度の6.71倍から2022年度には2.04倍まで低下しました。全体として見れば、薬剤師の需給バランスは「売り手市場」から「均衡」へと変化しつつあります。
厚生労働省の推計では、2045年には最大で約10万人の薬剤師が過剰になるとも予測されています。ただしこれは「現在の業務のまま」という前提での推計であり、薬剤師に求められる役割の変化によって状況は変わりうる点に注意が必要です。
【2025年最新】データで見る薬剤師の需給状況
「薬剤師はいらない」という声がある一方で、最新データを見ると、薬剤師が依然として必要とされている実態も見えてきます。
有効求人倍率は依然として高水準
厚生労働省の「一般職業紹介状況」によると、2024年2月時点での医師・薬剤師等の有効求人倍率は2.34倍です。すべての職種の平均(1.20倍)と比較すると、薬剤師は依然として需要が高い状態にあります。
つまり、「薬剤師の資格があれば就職先がある」という状況は、現時点では続いていると言えます。
年収は上昇傾向
令和6年(2024年)の賃金構造基本統計調査によると、薬剤師の平均年収は599万3,200円です。前年比で約21万円増加しており、薬剤師の処遇は改善傾向にあります。
2024年度の診療報酬改定では、40歳未満の薬局薬剤師に対して+0.28%、病院薬剤師に対して+0.61%の報酬改定が行われました。大手調剤薬局チェーンでも平均5〜6%の賃上げが実施されており、薬剤師の待遇改善は進んでいます。
地域・職種による偏在が課題
薬剤師の需給状況は、地域や職種によって大きく異なります。
病院薬剤師については、厚生労働省の偏在指標調査によると、すべての都道府県で医療需要に対する病院薬剤師数が不足している状況です。特に青森県、秋田県、山形県では深刻な不足が報告されています。
一方、薬局薬剤師の偏在指標は全国平均で1.08と目標を上回っていますが、福井県、富山県、鹿児島県など地方では不足しています。
都市部では充足感が出始めている一方、地方では依然として薬剤師不足が続いているのが現状です。
AIは本当に薬剤師の仕事を奪うのか?
「AIに仕事を奪われる」という不安は多くの薬剤師が感じていることでしょう。ここでは、AIと薬剤師の関係を冷静に分析します。
AIに代替される可能性が高い業務
厚生労働省の「AIリテラシー」資料によると、AIやロボットに代替されやすいのは「パターン化しやすく定型的な業務」です。薬剤師の業務で言えば、以下が該当します。
- 医薬品のピッキング・分包作業
- 在庫管理・発注業務
- 処方箋の読み取り・データ入力
- 相互作用チェック(データベース照合型)
- 薬歴の入力補助
AIでは代替できない業務
一方、「感性、協調性、創造性、問題発見力」を必要とする業務は、AIでの代替が困難とされています。
- 患者さんの表情や声色から体調変化を察知する
- 言葉にならない不安や悩みを引き出す
- 個々の生活環境に応じた服薬指導
- 医師への処方提案
- 在宅医療での多職種連携
結論として、AIは薬剤師の「敵」ではなく「協力パートナー」です。対物業務をAIに任せることで、薬剤師は対人業務により注力できるようになります。むしろAIを上手に活用できる薬剤師こそ、これからの時代に求められる人材と言えるでしょう。
これからの薬剤師に求められる5つのスキル
AI時代でも必要とされる薬剤師になるために、身につけるべきスキルを5つご紹介します。
スキル1:高度なコミュニケーション能力
対人業務の重要性が増す中、コミュニケーション能力はこれまで以上に求められます。
単に薬の情報を伝えるだけでなく、患者さんの話に耳を傾け、不安や悩みに共感する姿勢が大切です。特にリフィル処方箋の対応では、患者さんの何気ない言葉から体調変化や副作用の兆候を察知し、適切な受診勧奨につなげる観察力が必要になります。
スキル2:専門・認定資格の取得
専門性を高めることで、他の薬剤師との差別化を図れます。特に需要が高まっている資格は以下の通りです。
資格名 | 主な取得条件 | 活躍が期待できる職場 |
|---|---|---|
がん薬物療法認定薬剤師 | 実務経験3年以上、がん薬物療法の実務経験3年以上など | がん診療連携拠点病院、がん専門病院 |
在宅療養支援認定薬剤師 | 実務経験3年以上、在宅業務経験など | 在宅療養支援をする薬局、病院 |
緩和薬物療法認定薬剤師 | 実務経験3年以上、緩和ケア領域の経験1年以上など | 緩和ケアチームのある病院、ホスピス |
また、「研修認定薬剤師」はかかりつけ薬剤師の要件の一つでもあり、すべての薬剤師にとって取得しておきたい資格です。
スキル3:IT・DXスキル
医療DX(デジタルトランスフォーメーション)が進む中、ITスキルは必須となっています。
- 電子処方箋システムの運用
- オンライン服薬指導の実施
- 電子薬歴の活用
- 医療情報システムの理解
デジタルツールを使いこなし、業務効率化と質の高い対人業務を両立できる薬剤師が求められています。
スキル4:在宅医療・フィジカルアセスメント能力
高齢化の進展に伴い、在宅医療のニーズは急速に高まっています。在宅医療では、医師の訪問頻度が限られるため、薬剤師が患者さんの体調変化を早期に発見する「目」となることが期待されています。
バイタルサインの測定、服薬状況の確認、生活環境の観察など、フィジカルアセスメント(身体的評価)能力を身につけることで、在宅医療で活躍できる薬剤師になれます。
スキル5:かかりつけ薬剤師としての地域連携力
厚生労働省は「2025年にはすべての薬局がかかりつけ薬局の機能を有すること」を目指しています。かかりつけ薬剤師には、以下の3つの機能が求められます。
- 服薬情報の一元的・継続的把握:複数の医療機関からの薬を管理し、重複投薬や相互作用を防ぐ
- 24時間対応・在宅対応:休日や夜間の相談にも応じられる体制を整える
- 医療機関等との連携:多職種と連携し、地域包括ケアシステムの一員として活動する
地域の医師、看護師、ケアマネジャーなどと「顔の見える関係」を築き、チーム医療に貢献できる薬剤師が求められています。
将来性を高める具体的なキャリア戦略
ここからは、必要とされる薬剤師になるための具体的な行動指針をお伝えします。
戦略1:対人業務のスキルを磨く
AIに代替されにくい対人業務に注力することが、将来性を高める最も確実な方法です。
- 服薬指導の質を高める(傾聴力、共感力の向上)
- 患者さんの潜在的なニーズを引き出す力をつける
- 医師への処方提案を積極的に行う
戦略2:専門分野を持つ
「何でもできる薬剤師」より「○○に強い薬剤師」のほうが、今後は市場価値が高まります。がん、糖尿病、精神科、小児など、特定の領域で専門性を深めることを検討しましょう。
戦略3:在宅医療の経験を積む
在宅医療は今後も需要が拡大する分野です。現在の職場で在宅業務に携わる機会がない場合は、在宅に力を入れている薬局への転職も選択肢の一つです。
戦略4:AIを活用する側になる
AIを恐れるのではなく、積極的に活用しましょう。AIによる処方監査支援や薬歴入力補助を使いこなすことで、対人業務に充てる時間を増やせます。
戦略5:学び続ける習慣をつくる
医療は日々進歩しています。学会参加、論文購読、e-ラーニングの活用など、継続的に学ぶ姿勢が必要です。「研修認定薬剤師」の取得・維持を通じて、学習習慣を身につけましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 薬剤師の仕事は本当になくなりますか?
A. すべてなくなることはありません。対物業務はAIに代替される可能性がありますが、対人業務(服薬指導、相談対応、在宅医療など)は人間にしかできません。むしろ、AIとうまく協働できる薬剤師の価値は高まると考えられます。
Q. 今から薬剤師を目指すのはやめたほうがいいですか?
A. そんなことはありません。2024年時点で有効求人倍率は2.34倍と依然として高水準であり、薬剤師の需要はあります。ただし、「資格さえあれば安泰」という時代ではなくなりつつあるため、専門性やコミュニケーション能力を高める意識は持っておくべきでしょう。
Q. 転職して環境を変えるべきでしょうか?
A. 現在の職場でスキルアップの機会が限られている場合は、転職も有効な選択肢です。特に、かかりつけ薬剤師の育成に力を入れている薬局や、在宅医療に積極的な薬局への転職は、将来性を高めることにつながります。
まとめ
「薬剤師はいらない」という声の背景には、業務の見えにくさ、AIの進化、需給バランスの変化など、さまざまな要因があります。
しかし、薬剤師の仕事がすべてなくなることはありません。対物業務から対人業務へのシフトが進む中、コミュニケーション能力、専門性、IT・DXスキル、在宅医療の知識を身につけた薬剤師は、むしろこれまで以上に必要とされる存在になります。
大切なのは、変化を恐れるのではなく、変化に適応していく姿勢です。今日からできることとして、まずは自分の強みと伸ばしたいスキルを整理してみてください。
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