薬剤師のブランクからの復職完全ガイド|最新制度・研修・給与・面接対策【2026年版】
ブランクのある薬剤師が安心して復職するための完全ガイド。厚生労働省統計・デジタル庁ダッシュボード等の一次情報に基づき、2024〜2025年の求人動向・調剤報酬改定・薬機法改正・復職支援研修・eラーニング・給与相場・面接対策まで網羅。復職モデルケース3パターンとチェックリスト付き。

ブランクがあっても薬剤師の復職は十分可能
「何年もブランクがあるけれど、また薬剤師として働けるのだろうか」——出産・育児・介護・体調不良などの理由で現場を離れた薬剤師の方にとって、復職への不安は大きいものです。
結論から言うと、薬剤師の復職環境は制度面・市場面の両方で追い風の状況にあります。この記事では、2024〜2025年の公的統計や制度改正をもとに、復職に必要な情報を網羅的にお伝えします。
この記事でわかること
- 2024年の届出薬剤師数・求人動向と、復職者にとっての市場環境
- 2024年調剤報酬改定・2025年薬機法改正など押さえるべき制度変更
- 都道府県薬剤師会の無料研修やeラーニングなど具体的な学び直し手段
- パート・派遣・正社員の給与相場と雇用形態の選び方
- 面接でブランクを強みに変える伝え方とモデルケース
結論:5つのポイント
- 薬剤師の有効求人倍率は全職種平均の約2倍。地域や雇用形態で差はあるが、求人は相対的に多い
- 2024年調剤報酬改定(+0.88%)と2025年薬機法改正で「対人業務重視」が加速。復職者には追い風
- 都道府県薬剤師会の復職支援研修(多くは無料)と、eラーニングを組み合わせれば数ヶ月で知識基盤を再構築できる
- ブランクがあっても薬剤師資格の希少性から、時給が大幅に下がるケースは少ない
- 子育て・介護の経験は、対人業務が重視される現場で強みになる
薬剤師の就業状況と求人動向【2024〜2025年最新データ】
この章の要点:届出薬剤師数は過去最多の32.9万人に到達。有効求人倍率は2〜3倍台で推移しており、ブランクのある薬剤師にとっても復職しやすい求人環境が続いています。
届出薬剤師数は過去最多の32.9万人
厚生労働省「令和6(2024)年 医師・歯科医師・薬剤師統計」(2025年12月23日公表)によると、2024年12月31日現在の届出薬剤師数は329,045人で、前回調査(2022年:323,690人)から1.7%増加しました。人口10万人当たりの薬剤師数は265.8人で、こちらも過去最多です。
女性薬剤師は203,979人(構成比62.0%)と全体の6割以上を占め、この比率は長期的に上昇を続けています。29歳以下に限ると69.3%が女性であり、今後さらに女性比率が高まる見通しです。
施設別の内訳では、薬局が197,437人(60.0%)と最多で前回から6,702人(3.5%)増加しました。病院は57,595人で1.8%増ですが、注目すべきは医薬品関係企業が34,184人と前回比7.8%減と大幅に減少している点です。製薬企業からの転職者が薬局・病院に流入する構造が見て取れます。
有効求人倍率は2〜3倍台で推移
厚生労働省が公表する「職業安定業務統計」の職業分類「医師・歯科医師・獣医師・薬剤師」カテゴリによると、有効求人倍率は2015年のピーク(7.18倍)から低下傾向にあるものの、2024年は概ね2〜3倍台で推移しています(※薬剤師単独の数値ではなく、上記カテゴリの合算値である点に留意が必要です)。
全職種平均(約1.2倍)と比較すると依然として高い水準にあり、地域・雇用形態で差はあるものの、求人が相対的に多い状況が続いています。ただし、コロナ禍前の5倍台には戻っておらず、薬局経営の厳しさ(薬価差益の縮小、調剤報酬の適正化)が求人抑制の一因とされます。
都道府県別では、沖縄県(人口10万対155.3人)、福井県(170.4人)、青森県(175.5人)など地方で薬剤師不足が深刻です(出典:前掲「医師・歯科医師・薬剤師統計」)。これらの地域では時給・年収が都市部を上回るケースが多い点も覚えておきたいポイントです。
離職の実態と女性のM字カーブ
厚生労働省「令和4年(2022年)雇用動向調査」によると、医療・福祉業界の離職率は15.3%で全産業平均(15.0%)とほぼ同水準です。離職理由のトップは「結婚・出産・育児・介護(19%)」で、次いで「仕事内容への不満(18.5%)」「労働時間・休日条件(16%)」が続きます。
特に非就業・不詳の薬剤師のうち80.6%が女性であり、出産・育児による離職が大きな要因であることが推察されます。女性薬剤師の年齢別就業数を見ると、30〜34歳の23,999人に対し35〜39歳は21,516人と約2,500人減少し、40〜44歳で23,711人に回復するという緩やかなM字カーブが確認されます。薬局でのパート・時短勤務が整備されてきたことで、このカーブは年々緩和傾向にあります。
2024〜2026年の制度改正が復職者に与える影響
この章の要点:2024年調剤報酬改定(+0.88%)で在宅・対人業務の評価が強化。2025年薬機法改正では調剤業務の外部委託が法制化され、薬剤師の役割が「対人業務」にさらにシフトしています。
2024年度調剤報酬改定のポイント
2024年度の調剤報酬改定は改定率+0.88%(2012年以来の大きなプラス改定)で、2024年6月1日に施行されました。復職者が押さえるべき主な変更点は以下のとおりです。
- 調剤基本料は各区分3点ずつ引き上げ(調剤基本料1は42点→45点)
- 地域支援体制加算は各7点ずつ引き下げ(加算1は39点→32点)。かかりつけ薬剤師指導料等の実績が算定要件に追加
- 在宅薬学総合体制加算が新設。訪問薬剤管理の実績に基づく評価が導入
- 特定薬剤管理指導加算1が「イ」(10点)と「ロ」(5点)の2区分に見直し。毎回算定が不可に変更
- 調剤後薬剤管理指導料(60点)が新設。糖尿病・慢性心不全患者への継続フォローが独立評価
- 医療DX推進体制整備加算も新設。電子処方箋導入が施設基準に含まれる
全体として、「対物業務の効率化」と「対人業務の質の評価」という方向性が明確に打ち出された改定です。復職者は、服薬フォローアップや在宅対応など対人業務の重要性が増している点を意識しておきましょう。
2025年薬機法改正の4つの柱
2025年5月に成立・公布された改正薬機法は、復職者にとって特に重要な変更を含みます。なお、施行は項目ごとに段階的に進むため、すべてが即座に施行されるわけではありません。
最大の注目点は調剤業務の一部外部委託の法制化です。一包化・錠剤分包等の調剤補助業務を他薬局に委託できるようになります(都道府県知事の許可が必要)。これにより薬剤師は対物業務の負担が軽減され、対人業務(服薬指導・健康相談)に注力しやすい環境が法的に整備されます。
もう一つの重要な変更は薬剤師不在店舗での遠隔販売制度の導入です。ICTを活用して薬剤師が遠隔管理する形でコンビニ等でのOTC医薬品販売が可能になります(公布後2年以内に段階的施行、2027年頃の見込み)。
改正薬機法の詳細は厚生労働省の薬機法改正関連ページで確認できます。
電子処方箋の普及が加速
2023年1月に本格運用が開始された電子処方箋は急速に普及が進んでいます。デジタル庁が公開する「電子処方箋の導入状況に関するダッシュボード」によると、2025年9月時点で薬局の対応施設率は8割台に達しています(※集計指標は「申請ベース」「運用開始ベース」等で異なるため、ダッシュボード上の定義をご確認ください)。
病院は12.9%、医科診療所は19.0%と医療機関側の対応はまだ進行中ですが、薬局側ではほぼ標準的な設備となりつつあります。復職者は電子処方箋の基本的な運用(重複投薬チェック、併用禁忌アラートなど)を理解しておく必要があります。
復職支援研修と学び直しの方法
この章の要点:都道府県薬剤師会が実施する無料の復職支援研修に加え、eラーニングや情報サイトを活用すれば、自宅からでも効率的に知識を取り戻せます。
都道府県薬剤師会の復職支援プログラム(無料が多い)
多くの都道府県薬剤師会が、県委託事業として復職支援研修を実施しています。参加費は無料のケースが多く、薬剤師会の会員でなくても受講可能な場合がほとんどです。代表的な例を紹介します。
- 愛知県薬剤師会:全4回の必修講習会(一部Zoom参加可)に加え、薬局見学・病院薬剤部見学・調剤実習を実施。託児サービスも完備
- 愛媛県薬剤師会:半日の座学研修に加え、地域薬局での実務実習を原則4時間×10〜40単位で実施。保険調剤・服薬指導・薬歴記載・在宅医療など実践的な内容をカバー
- 宮城県薬剤師会:未就業薬剤師向けの10日間の復職支援プログラムを提供
- 兵庫県薬剤師会:出産・育児・介護・転居等で5〜10年以上のブランクがある薬剤師を対象とした専門プログラムを実施
上記は一例であり、内容や開催時期は年度ごとに変わります。「〇〇県薬剤師会 復職支援」で検索するか、お住まいの地域の薬剤師会ホームページで最新の研修スケジュールを確認してみてください。
主なeラーニングサービス一覧
復職準備として最も手軽に始められるのがeラーニングです。主要なサービスをまとめました。
サービス名 | 費用 | 特徴 | 認定単位 |
|---|---|---|---|
MPラーニング | 約15,580〜15,870円/13ヶ月 | 約969コンテンツ・323単位。1本約30分の動画+テスト | 研修認定薬剤師対応 |
マナブル(日本薬剤師会研修プラットフォーム) | 無料 | ICT活用、5疾病、感染対策、災害医療等のコンテンツ | 一部対応 |
メディカルナレッジ | 一部無料(登録不要) | 専門医による講義を年間100本以上配信 | — |
e-MRファルマシアン(サノフィ提供) | 完全無料 | 臨床知識・コーチング・法律コラムなど幅広いテーマ | — |
効率的な知識キャッチアップの5ステップ
復職者の勉強は優先順位が重要です。経験者の知見を踏まえた効率的な学習ステップを紹介します。
- 最新の医薬品集(『今日の治療薬』等)を入手し、ブランク中に登場した新薬を確認する
- 生活習慣病関連薬(高血圧・糖尿病・脂質異常症)と腎臓関連を最優先で復習する(処方頻度が高いため)
- MPラーニングやマナブルで体系的にeラーニングを受講する
- 都道府県薬剤師会の復職支援研修に参加し、調剤実習で実技感覚を取り戻す
- m3.comや日経DIに登録し、最新の医療ニュース・DIクイズで継続的に知識をアップデートする
m3.comは28万人以上の薬剤師が登録する医療従事者向け情報サイト(無料)、日経DIはDIクイズが人気の薬剤師向けメディア(無料会員制)です。日常的な情報収集ツールとして活用できます。
復職後の現場で直面するテクノロジーと業務の変化
この章の要点:電子薬歴は多くの薬局で標準化し、AIや自動化機器の導入も進んでいます。「調剤技術を忘れた」ことよりも、新しいシステムへの適応力が重要です。
電子薬歴とAIが広がる調剤現場
ブランクの長い薬剤師が最も驚くのが、調剤現場のデジタル化の進展でしょう。電子薬歴は多くの薬局で標準的なシステムとなっており、紙の薬歴を使用する薬局はごく少数派になっています。
最新の電子薬歴システムでは、生成AIによる薬歴入力支援、GS1バーコード読み取りによる調剤監査、音声入力アプリ、服薬フォローアップの自動送信機能などが搭載されるケースが増えています。クラウド型システムでは、タブレットを使って在宅訪問先から薬歴にアクセスすることも可能です。
調剤機器も進化が著しく、大手チェーンを中心に全自動錠剤分包機、散薬調剤ロボット、水剤定量分注機などが導入されています。一部の先進的な店舗では、調剤業務の大部分が自動化・半自動化されている事例もあります。復職者は「調剤技術を忘れている」ことを過度に心配する必要はなく、むしろ新しいシステムへの適応力が求められます。
対人業務シフトが薬剤師の働き方を根本から変えた
2015年の「患者のための薬局ビジョン」以降、「対物業務から対人業務へ」の転換が国の政策として推進されてきました。特に重要なのが服薬フォローアップの法的義務化です。2020年9月施行の改正薬機法・改正薬剤師法により、薬剤使用期間中の継続的フォローアップが薬剤師個人の義務として明文化されました。
加えて、2021年8月から始まった地域連携薬局・専門医療機関連携薬局の認定制度、健康サポート薬局の制度も理解しておくべき重要な変更です。地域連携薬局は入退院時の医療機関との情報連携や在宅医療対応が認定要件となっており、薬剤師に求められる役割が大きく広がっています。
給与相場と雇用形態の選び方
この章の要点:パート時給の相場は2,000〜2,600円、派遣は2,800〜3,500円。ブランクがあっても大幅な時給低下は起きにくい傾向があります。紹介予定派遣も有力な選択肢です。
パート時給は2,000〜2,600円、派遣は2,800〜3,500円
厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、パート薬剤師の平均時給は2,639円(所定内給与額ベース)です。求人掲載ベースでは2,000〜2,600円が相場帯となります。地域差が大きく、都市部では1,800〜2,200円、地方の薬剤師不足地域では2,500円以上となる傾向があります。
派遣薬剤師の平均時給は約3,341円で、パートの約1.6倍。全国相場は2,800〜3,500円ですが、へき地や急募案件では時給5,000円超の求人も存在します。正社員薬剤師の平均年収は約599万円(同調査)で、全産業平均を大幅に上回ります。
ブランクがあっても時給が大幅に下がるケースは少ない傾向にあります。薬剤師資格自体の希少性が背景にあるためです。ただし、ブランクが長い場合は即戦力を求める派遣よりも、まずはパートからの復帰が無理のないスタートになるでしょう。
紹介予定派遣という「お試し入社」の活用
紹介予定派遣は、最長6ヶ月の派遣期間を経て双方合意のもと直接雇用に移行する制度です。ブランクのある薬剤師にとって3つの大きなメリットがあります。
- 職場の雰囲気・業務内容を実際に体験してからの判断が可能
- 派遣期間中に業務感覚を取り戻せる
- 病院での派遣は原則禁止だが紹介予定派遣は例外的に認められるため、病院薬剤師を目指す復職者にとって貴重なルート
デメリットとしては、直接雇用は確約ではない点と、通常派遣より求人数が限られる点があります。
認定薬剤師と自己研鑽で市場価値を高める
この章の要点:研修認定薬剤師はかかりつけ薬剤師の必須条件。2026年度にはJPALS制度が大幅改正され、認定取得のハードルが下がります。
研修認定薬剤師はかかりつけ薬剤師の必須条件
日本薬剤師研修センターの認定薬剤師制度は、1994年に開始され認定者数は約11万人を超えます。新規認定の要件は申請日から遡って4年以内に40単位以上(1年で取得も可能)、更新は3年間に30単位以上(各年5単位以上)です。
この資格が重要なのは、かかりつけ薬剤師指導料(76点)の算定要件に認定薬剤師の取得が含まれているためです。復職後にかかりつけ薬剤師として活動するためには必須であり、転職市場でも評価されます。PECS(薬剤師研修・認定電子システム)への事前登録が必要なため、復職を考え始めた段階で早めに登録しておくことをおすすめします。
JPALS制度は2026年度に大幅改正
日本薬剤師会が運営するJPALS(生涯学習支援システム)は、ポートフォリオの蓄積とクリニカルラダー(CL)で構成される自己研鑽プログラムです。会員は無料、非会員は年額11,000円で利用できます。
注目すべきは2026年度の制度改正で、従来のCLレベル(1〜6)が廃止され、認定取得までの期間が大幅に短縮されます。公式の制度改正案内によると、新要件では3年以内に実践記録18本以上+Webテスト合格で「JPALS認定薬剤師」を取得でき、最短2027年4月に取得可能となります。復職者にとっては取得ハードルが下がる朗報です。
面接でブランクを武器に変える伝え方
この章の要点:採用担当者が見ているのは「学ぶ意欲」と「長期勤務の意思」。ブランク中の経験を対人業務の強みに変換する伝え方が効果的です。
採用担当者が見ているのは「学ぶ意欲」と「長期勤務の意思」
面接で最も重要なのは、ブランクの理由を正直に伝えた上で、前向きな姿勢を示すことです。採用担当者の最大の懸念は「またすぐに辞めてしまうのでは」という点にあるため、今後の勤務継続意思とキャリアプランを具体的に示すことが効果的です。
NGなのは「特に何もしていませんでした」という回答や、前職への不満を述べること。一方で、「知識不足を素直に認めた上で勉強し直したい」と伝える方が、かえって好印象を与えます。ブランク中にeラーニングを受講したり、復職支援研修に参加したりした事実があれば、大きなアピール材料となります。
子育て・介護経験を強みに変える志望動機の組み立て方
子育てブランクからの復職では、育児経験をそのまま薬剤師業務の強みに転換する表現が効果的です。たとえば、「子どもに薬を飲ませることの難しさや授乳中の服薬への不安を身をもって経験した。患者さまやご家族の気持ちに寄り添った服薬指導に活かしたい」という形で、ブランク期間を「対人業務に活きる経験」として位置づけましょう。
介護ブランクからの復職では、在宅医療・地域包括ケアへの関心と結びつけるのが自然です。「介護経験を通じて在宅医療に携わりたいという思いが強くなった」というストーリーは説得力があります。
キャリアプランは正直に伝えるのが鉄則です。「子どもが中学生になるまではパート勤務、その後は徐々にウエイトを上げたい」など、具体的なタイムラインとともに長期視点を示せば、採用側も安心して受け入れやすくなります。
復職モデルケース3パターン
復職のイメージを具体的に持てるよう、3つのモデルケースを紹介します。
ケース1:育児ブランク7年 → 週3パート → 半年後に在宅担当へ
30代後半のAさんは、第二子出産を機に退職し7年間のブランク。復職支援研修(県薬剤師会・無料)を受講後、自宅近くの薬局にパート(週3日・1日5時間)で復帰しました。電子薬歴の操作は2〜3週間で慣れ、半年後には在宅訪問業務も担当。「子育ての経験があるからこそ、小児の服薬指導で保護者の不安に寄り添える」と職場でも評価されています。
ケース2:製薬企業からの転身 → 研修+短時間勤務で再適応
40代前半のBさんは、製薬企業のMR職を退職後3年のブランク。調剤経験が浅かったため、MPラーニングで基礎を学び直した上で、研修制度が充実した中規模チェーン薬局に正社員として入社。最初の3ヶ月は先輩薬剤師とペアで業務にあたり、半年で独り立ちしました。
ケース3:介護ブランク5年 → 在宅医療に強い薬局へ
50代のCさんは、親の介護のため5年間離職。介護経験を活かしたいと考え、在宅医療に力を入れる地域連携薬局に紹介予定派遣で復帰しました。3ヶ月の派遣期間を経て直接雇用に移行。「介護の現場を知っているからこそ、多職種連携がスムーズにできる」と在宅チームの中心メンバーとして活躍しています。
※上記は復職者に多い典型的なパターンをもとに構成したモデルケースです。
復職前チェックリスト
復職活動を始める前に、以下の項目を確認しておきましょう。すべてを一度にやる必要はありませんが、優先度の高いものから取り組んでみてください。
知識・スキルの準備
- □ 最新の『今日の治療薬』等でブランク中の新薬を確認した
- □ 生活習慣病薬(高血圧・糖尿病・脂質異常症)を中心に復習した
- □ 電子処方箋の基本的な仕組みを理解した
- □ 電子薬歴の基本操作(SOAP形式)を確認した
- □ 服薬フォローアップの法的義務と基本的な流れを把握した
研修・学習の実施
- □ 都道府県薬剤師会の復職支援研修を調べた(または受講した)
- □ eラーニング(MPラーニング、マナブル等)を受講開始した
- □ m3.comや日経DIに登録し、日常的な情報収集を始めた
資格・キャリアの整備
- □ PECS(薬剤師研修・認定電子システム)に登録した
- □ 研修認定薬剤師の取得計画を立てた
- □ 2024年調剤報酬改定の主な変更点を把握した
面接・就職活動の準備
- □ ブランクの理由と今後のキャリアプランを整理した
- □ 子育て・介護等の経験を対人業務の強みに変換する言葉を用意した
- □ 希望する雇用形態(パート・派遣・正社員)と勤務条件を明確にした
まとめ:ブランクは「空白」ではなく「新たな視点を得た期間」
薬剤師の復職環境は、制度面・市場面の両方で追い風が続いています。有効求人倍率は全職種平均の約2倍の水準で推移し、ブランクがあっても大幅な待遇低下は起きにくい状況です。2025年薬機法改正による調剤業務の外部委託法制化は、復職者が「調剤の勘を取り戻せるか」という不安を軽減する方向に作用するでしょう。
復職の成否を分けるのは、ブランク中にどれだけ準備したかです。都道府県薬剤師会の無料復職支援研修、eラーニング、日常的な情報収集——これらを組み合わせれば、数ヶ月で現場復帰に必要な知識基盤を再構築できます。
最も大切なのは、ブランクを「空白期間」ではなく「新たな視点を得た期間」と捉え直すことです。子育てや介護の経験は、患者の生活に寄り添う対人業務が重視される現代の薬局業務において、紛れもない強みとなります。
まずは、お住まいの地域の薬剤師会の復職支援研修を調べることから始めてみてください。多くは無料で参加でき、同じ立場の仲間と出会えるきっかけにもなります。
よくある質問(FAQ)
Q. ブランクが10年以上ありますが、本当に復職できますか?
復職は十分に可能です。10年以上のブランクがある方向けの専門プログラムを実施している薬剤師会(例:兵庫県薬剤師会)もあります。まずは復職支援研修とeラーニングで基礎知識を取り戻し、パートや紹介予定派遣から段階的に復帰するのが現実的なルートです。
Q. 調剤の技術をすっかり忘れてしまいました。大丈夫でしょうか?
現在の調剤現場では自動化・半自動化が進んでおり、以前のように手作業中心ではありません。復職支援研修の調剤実習で感覚を取り戻せますし、多くの薬局では復職者向けの研修期間を設けています。それよりも、電子薬歴の操作や服薬フォローアップなど新しい業務への適応力が重要です。
Q. 復職支援研修はどこで受けられますか?費用はかかりますか?
各都道府県の薬剤師会が実施しており、多くは無料です。「○○県薬剤師会 復職支援」で検索すると、お住まいの地域の研修情報が見つかります。薬剤師会の会員でなくても参加可能な場合がほとんどです。
Q. eラーニングだけで研修認定薬剤師の単位は取れますか?
はい、MPラーニングなどのeラーニングだけでも研修認定薬剤師に必要な単位(新規:4年以内に40単位)を取得できます。ただし、対面研修も組み合わせると知識の定着が深まるためおすすめです。
Q. パートと派遣、どちらから始めるのがおすすめですか?
ブランクが長い場合は、まずパートからの復帰がおすすめです。派遣は即戦力が求められるケースが多いため、パートで業務感覚を取り戻してから派遣に切り替える方が無理のないステップアップになります。なお、紹介予定派遣は「お試し」で働けるため、ブランク明けにも向いています。
Q. 復職後の時給はブランク前より下がりますか?
薬剤師資格の希少性から、ブランクがあっても時給が大幅に下がるケースは少ない傾向にあります。パートの相場は2,000〜2,600円程度で、地方の薬剤師不足地域ではさらに高い場合もあります。ただし、管理薬剤師やかかりつけ薬剤師としての加算が付く立場になると、さらに待遇が上がる可能性があります。
Q. 子どもが小さいので短時間しか働けません。求人はありますか?
週2〜3日、1日4〜5時間のパート求人は多く出ています。薬局は営業時間が長い業態のため、午前のみ・午後のみといったシフトも組みやすいです。託児サービス付きの復職支援研修を実施している薬剤師会もあるので、まずは研修から始めるのもよいでしょう。
Q. 面接でブランクの理由を聞かれたらどう答えればいいですか?
育児・介護・体調不良などの理由は正直に伝えて問題ありません。大切なのは、ブランク中の経験を前向きに伝え、今後のキャリアプランを具体的に示すことです。「子育ての経験を対人業務に活かしたい」「介護の経験から在宅医療に携わりたい」など、ブランクが強みになるストーリーを事前に準備しておきましょう。
Q. 電子処方箋や電子薬歴の操作が不安です。事前に学べますか?
復職支援研修で電子薬歴の実習が含まれるプログラムもあります。また、各電子薬歴メーカーがデモ動画やマニュアルを公開していることもあるので、事前にイメージを掴んでおくとよいでしょう。実際の操作は入社後のOJTで覚える部分が大きいため、過度に心配する必要はありません。
Q. 病院薬剤師として復職したいのですが、ブランクがあると難しいですか?
病院薬剤師の求人は薬局と比べて数が限られますが、不可能ではありません。紹介予定派遣は病院でも利用可能(通常の派遣は原則禁止)なので、この制度を活用して病院での勤務を体験してから直接雇用を目指す方法があります。DI業務(医薬品情報管理)や病棟薬剤業務など、希望する分野を明確にして応募すると選考がスムーズです。