キャリアノウハウ

薬剤師の有効求人倍率は?2025年最新データと都道府県別の傾向を徹底解説

薬剤師の有効求人倍率を2025年最新データで解説。都道府県別の偏在状況や病院・薬局別の需要傾向、将来予測まで詳しく紹介。転職を考える薬剤師が押さえておくべきポイントをまとめました。

薬剤師の有効求人倍率は?2025年最新データと都道府県別の傾向を徹底解説のキャリアノウハウ記事サムネイル画像

「薬剤師は売り手市場」と聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。しかし近年、薬剤師の有効求人倍率は大きく変化しており、「将来は薬剤師が余る」という声も聞かれるようになりました。

実際のところ、薬剤師の転職市場は今どのような状況なのでしょうか。

本記事では、厚生労働省の最新統計をもとに、薬剤師の有効求人倍率の現状と推移を詳しく解説します。都道府県別の偏在状況や、病院・薬局それぞれの需要傾向、そして2045年までの将来予測についても触れていきます。

転職を検討している方や、今後のキャリアに不安を感じている薬剤師の方は、ぜひ参考にしてください。

薬剤師の有効求人倍率とは?基本を押さえよう

有効求人倍率の意味と見方

有効求人倍率とは、求職者1人あたりに対して何件の求人があるかを示す指標です。

簡単にいうと、「仕事を探している人」と「働き手を探している企業」のバランスを数値化したものです。

  • 1.0倍:求職者と求人数がちょうど同じ状態
  • 1.0倍より高い:求人の方が多い「売り手市場」
  • 1.0倍より低い:求職者の方が多い「買い手市場」

たとえば有効求人倍率が2.0倍であれば、求職者1人に対して2件の求人がある状態です。つまり、転職先を選びやすい環境といえます。

薬剤師の有効求人倍率はどう調べる?

薬剤師の有効求人倍率は、厚生労働省が毎月発表している「一般職業紹介状況」で確認できます。

ただし、統計上は「医師・歯科医師・獣医師・薬剤師」がまとめて集計されている点に注意が必要です。厳密に「薬剤師だけ」の数値ではありませんが、薬剤師の需要動向を把握する目安として広く活用されています。

【2024年最新】薬剤師の有効求人倍率と推移

現在の有効求人倍率は約2〜3倍

厚生労働省の統計によると、2024年9月時点の「医師・薬剤師等」の有効求人倍率は約2.2倍です。

パート・アルバイトを除いた正社員のみで見ると約3.1倍となっており、他の職種と比較すると依然として高い水準を維持しています。

項目

有効求人倍率(2024年)

全職種平均

1.20倍

医師・薬剤師等(パート含む)

2.2倍

医師・薬剤師等(正社員のみ)

3.1倍

※出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」

全職種の平均有効求人倍率は1.20倍ですので、薬剤師はまだ「売り手市場」といえます。

過去10年間の推移を見ると減少傾向

過去の推移を見ると、薬剤師の有効求人倍率は明らかに減少傾向にあります。

年度

有効求人倍率

2013年(平成25年)

10.05倍

2015年(平成27年)

6.33倍

2019年(令和元年)

5.18倍

2021年(令和3年)

2.24倍

2023年(令和5年)

2.26倍

2024年(令和6年)

2.2倍

※出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」

2013年には10倍を超えていた有効求人倍率が、わずか10年ほどで約5分の1に減少しています。

この変化の主な要因としては、以下が挙げられます。

  • 薬学部の6年制移行と新設増加により、薬剤師の供給数が増加
  • 2020年のコロナ禍による受診控えで処方箋枚数が一時減少
  • 薬局の経営環境悪化により採用を控える傾向

とはいえ、2021年に1.9倍台まで落ち込んだ後は、2倍台前半で安定しています。急激な悪化は見られないものの、「誰でも好条件で転職できる」という時代は終わりつつあるといえるでしょう。

都道府県別に見る薬剤師の偏在状況

人口10万人あたりの薬剤師数ランキング

薬剤師の数は全国一律ではなく、地域によって大きな差があります。

厚生労働省の「令和4年医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、人口10万人あたりの薬剤師数(薬局・医療施設従事者)の全国平均は202.6人です。

薬剤師が多い都道府県TOP5

順位

都道府県

人口10万人あたり薬剤師数

1位

徳島県

244.0人

2位

兵庫県

236.6人

3位

東京都

235.7人

4位

大阪府

233.2人

5位

広島県

227.8人

薬剤師が少ない都道府県TOP5

順位

都道府県

人口10万人あたり薬剤師数

47位

沖縄県

149.4人

46位

福井県

163.6人

45位

青森県

167.2人

44位

富山県

170.5人

43位

秋田県

172.1人

※出典:厚生労働省「令和4年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」

上位の徳島県と最下位の沖縄県では、人口10万人あたりの薬剤師数に約95人もの差があります。

地方では依然として薬剤師不足が続く

薬剤師は都市部に集中する傾向があり、地方では人手不足が続いています。

とくに東北地方・北陸地方・九州南部では、すべての県が全国平均を下回っている状況です。

たとえば北海道では、薬剤師全体の約46%が札幌市に集中しているというデータもあります。同じ都道府県内でも、都市部と過疎地では状況が大きく異なるのです。

さらに深刻なのが「無薬局町村」の存在です。薬局がない地域では、住民が十分な薬剤師サービスを受けられない可能性があります。

こうした地域偏在は、転職を考える薬剤師にとってはチャンスともいえます。地方では好条件の求人が見つかりやすい傾向があるためです。

病院薬剤師と薬局薬剤師で異なる需要傾向

全都道府県で「病院薬剤師」が不足している

2023年に厚生労働省が公表した「薬剤師偏在指標」によると、すべての都道府県で病院薬剤師が不足しているという結果が明らかになりました。

偏在指標とは、その地域の薬剤師数と業務量のバランスを数値化したものです。1.0を目標とし、1.0未満であれば不足、1.0以上であれば充足している状態を意味します。

業態

全国平均の偏在指標

病院薬剤師

0.80(目標の80%しか確保できていない)

薬局薬剤師

1.08(目標を上回っている)

※出典:厚生労働省「薬剤師偏在指標」

病院薬剤師の偏在指標は全国平均で0.80であり、必要な薬剤師数の8割程度しか確保できていない状況です。

とくに深刻な地域としては、青森県(0.55)、秋田県(0.58)、山形県(0.62)などが挙げられます。目標の6割にも満たない状態が続いています。

薬局薬剤師は19都道府県で充足

一方、薬局薬剤師については19の都道府県で目標を達成しています。

とくに東京都、神奈川県、大阪府などの大都市圏では、薬局薬剤師は充足傾向にあります。

ただし、残りの28道府県では依然として不足状態です。福井県や富山県、鹿児島県などでは、薬局薬剤師も不足が続いています。

転職先を選ぶときのポイント

  • 病院薬剤師は全国的に不足しており、転職のチャンスが多い
  • 薬局薬剤師は地域によって状況が異なる
  • 地方の薬局では好条件の求人が見つかりやすい

薬剤師の将来予測|需要と供給のバランスはどうなる?

2030年頃までは需給バランスが維持される見込み

厚生労働省の検討会資料によると、2030年頃までは薬剤師の需要と供給のバランスは維持されると予測されています。

高齢化の進展により医療需要は増加する一方、薬剤師の業務拡大(在宅医療、かかりつけ薬剤師機能など)により、一定の需要は確保される見込みです。

2045年には供給過剰になる可能性

ただし、長期的には注意が必要です。

「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」の推計によると、2045年には薬剤師が供給過剰になる可能性が示されています。

年度

薬剤師の供給(推計)

薬剤師の需要(推計)

2030年

約38万人

約36〜38万人

2045年

約43〜46万人

約33〜41万人

※出典:厚生労働省「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」資料

2045年には、供給が需要を最大で約10万人以上上回る可能性があります。

ただしこの推計は、薬剤師の業務が現状と変わらないことを前提としています。在宅医療の拡大や新たな業務領域の開拓が進めば、需要の推計は変わる可能性もあります。

薬剤師の需要に影響を与える5つの要因

将来の薬剤師需要を左右する要因として、以下の5つを押さえておきましょう。

①テクニシャン制度(調剤補助)の導入検討

「テクニシャン制度」とは、薬剤師以外のスタッフが調剤関連業務の一部を担う仕組みです。

2019年の「0402通知」により、すでに以下の業務は薬剤師以外が行っても差し支えないとされています。

  • PTPシートのピッキング(取り揃え)
  • 納品された医薬品の棚入れ
  • 調剤済みの薬剤をお薬カレンダーに入れる作業

今後さらにテクニシャンの業務範囲が拡大すれば、調剤業務に従事する薬剤師の必要数は減少する可能性があります。

②対物業務のAI・機械化

ピッキングロボット、自動一包化機、AI監査システムなど、調剤業務の機械化が急速に進んでいます。

とくに鑑査業務へのAI導入は注目されており、処方通りに薬が入っているかを画像認識で確認するシステムが実用化されています。

機械化が進むほど、単純な対物業務を担う薬剤師の必要数は減少する傾向にあります。

③リフィル処方箋の普及

2022年に導入されたリフィル処方箋は、一定期間内であれば医療機関を受診せずに繰り返し調剤を受けられる仕組みです。

処方箋1枚あたりの来局回数が減るため、薬局の業務量に影響を与える可能性があります。

ただし、リフィル処方箋を利用する患者には、薬剤師によるより細やかな体調管理が求められます。業務内容が変化するものの、薬剤師の役割が不要になるわけではありません。

④オンライン服薬指導の拡大

コロナ禍を機に、オンライン服薬指導の規制が緩和されました。

自宅にいながら服薬指導を受けられるサービスは、患者の利便性を高める一方で、「近くにあるから」という理由だけでは薬局が選ばれなくなる可能性もあります。

⑤調剤報酬改定の影響

2024年の診療報酬改定では、門前薬局や大型チェーン薬局の調剤報酬が引き下げられました。

薬局の経営環境が厳しくなれば、人件費抑制のために採用を控える動きが出ることも考えられます。

これからの薬剤師に求められるスキルとは?

将来的に需要が変化しても「選ばれる薬剤師」であるために、以下のスキルを磨いておくことをおすすめします。

対人業務のスキル

調剤などの対物業務は機械化が進む一方で、患者とのコミュニケーション多職種連携といった対人業務の重要性は高まっています。

とくに以下のスキルは今後ますます求められます。

  • 服薬指導力(患者の理解度に合わせた説明)
  • 服薬フォローアップの実践力
  • 医師・看護師との連携コミュニケーション

在宅医療への対応力

高齢化が進む中、在宅医療のニーズは拡大しています。

患者の自宅を訪問し、服薬指導や残薬調整を行う「訪問薬剤師」の需要は今後も伸びると予測されています。

専門性の獲得

認定薬剤師や専門薬剤師の資格を取得することで、キャリアの幅が広がります。

とくにがん専門薬剤師感染制御認定薬剤師緩和薬物療法認定薬剤師などは、病院での評価が高い資格です。

よくある質問(FAQ)

Q1: 薬剤師は将来なくなる職業ですか?

A: すぐになくなることはありません。対物業務の機械化は進みますが、患者対応や医療チームでの連携など、薬剤師にしかできない業務は残ります。ただし、「誰でも好条件で就職できる」時代は終わりつつあるため、スキルアップの努力は必要です。

Q2: 地方への転職は年収アップにつながりますか?

A: つながる可能性があります。薬剤師が不足している地域では、好条件の求人が出やすい傾向があります。静岡県や長野県など、都市部以外でも平均年収が高い地域があります。

Q3: 病院薬剤師への転職は難しいですか?

A: 以前より門戸は広がっています。病院薬剤師は全都道府県で不足しているため、経験者であれば比較的転職しやすい状況です。ただし、公的病院の正規職員など一部の人気ポジションは競争率が高くなっています。

まとめ

薬剤師の有効求人倍率は、2024年時点で約2〜3倍と、他の職種と比較すれば依然として高い水準を維持しています。しかし、10年前の10倍超からは大きく減少しており、「売り手市場」の勢いは弱まりつつあります。

地域別に見ると、都市部と地方の偏在は依然として大きく、病院薬剤師は全都道府県で不足している状況です。将来的には2045年頃に供給過剰になる可能性が指摘されていますが、在宅医療の拡大など業務領域の変化によって予測は変わり得ます。

大切なのは、対人業務のスキルや専門性を磨き、「選ばれる薬剤師」を目指すことです。転職を検討している方は、地域や業態ごとの需要動向を踏まえて、自分に合った職場を探してみてください。

出典・参考資料

  • 厚生労働省「一般職業紹介状況」
  • 厚生労働省「令和4年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」
  • 厚生労働省「薬剤師偏在指標」
  • 厚生労働省「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会 とりまとめ」
  • 厚生労働省「調剤業務のあり方について(0402通知)」
関連記事