薬剤師の地方転職は本当にお得?年収・メリット・成功のコツを徹底解説
薬剤師の地方転職を検討中の方へ。都道府県別の年収ランキング(2025年最新)や、地方勤務のメリット・デメリット、Uターン・Iターン転職を成功させるポイントを現役薬剤師監修のもと詳しく解説します。

「都市部での勤務に疲れた」「年収をもっと上げたい」「地元に戻って働きたい」——そんな思いから、地方への転職を考える薬剤師が増えています。
実際、2025年最新のデータでは、地方勤務の薬剤師は都市部よりも年収が高い傾向にあり、都道府県によっては200万円以上の差が生じることも。一方で、求人の選択肢が限られたり、生活環境の変化に戸惑ったりするケースもあるため、事前の情報収集が欠かせません。
この記事では、薬剤師の地方転職について、最新の年収データやメリット・デメリット、転職を成功させるためのポイントを詳しく解説します。
薬剤師が地方で働くと年収は上がる?都道府県別ランキング【2025年最新】
「地方は年収が高い」とよく聞きますが、実際のデータではどうなっているのでしょうか。厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」をもとに、都道府県別の薬剤師年収を見てみましょう。
薬剤師の全国平均年収は約599万円
2025年最新のデータによると、薬剤師の全国平均年収は約599万円です。これは日本人全体の平均年収(約460万円)と比較しても高い水準にあります。
ただし、勤務する地域によって年収には大きな差があります。
都道府県別 薬剤師年収ランキングTOP10
順位 | 都道府県 | 平均年収 |
|---|---|---|
1位 | 熊本県 | 約762万円 |
2位 | 広島県 | 約716万円 |
3位 | 山口県 | 約688万円 |
4位 | 秋田県 | 約680万円 |
5位 | 宮城県 | 約672万円 |
6位 | 静岡県 | 約669万円 |
7位 | 長野県 | 約665万円 |
8位 | 高知県 | 約643万円 |
9位 | 島根県 | 約639万円 |
10位 | 茨城県 | 約630万円 |
※出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」より算出
注目すべきは、東京都や大阪府などの大都市圏が上位にランクインしていない点です。東京都は約550万円前後、大阪府も約560万円前後と全国平均を下回るケースもあります。
地方の年収が高い理由
なぜ地方の薬剤師の年収は高いのでしょうか。主な理由は以下の3つです。
1. 薬剤師の需給バランス
都市部には薬学部を持つ大学が多く、卒業後もそのまま都市部で就職する薬剤師が多いため、供給過多になりやすい傾向があります。一方、地方は慢性的な薬剤師不足に悩んでおり、人材確保のために高い年収を提示する薬局や病院が多いのです。
2. 人材獲得競争
地方の中小薬局は、大手チェーンとの人材獲得競争に勝つため、年収や福利厚生で差別化を図っています。引っ越し費用や社宅の提供、住宅手当など、都市部ではあまり見られない好条件の求人も珍しくありません。
3. 在宅医療への対応
高齢化が進む地方では在宅医療のニーズが高く、在宅訪問に対応できる薬剤師は特に重宝されます。在宅対応のスキルを持つ薬剤師は、年収600〜700万円以上の求人も狙いやすくなっています。
薬剤師が地方で働く5つのメリット
年収だけでなく、地方勤務にはさまざまなメリットがあります。転職を検討する際の判断材料にしてください。
1. 生活費を抑えやすく、貯金しやすい
地方は都市部と比べて家賃が大幅に安いのが特徴です。都内で1Kの家賃が8〜10万円するエリアでも、地方なら同等以上の広さで3〜5万円程度に収まることも珍しくありません。
年収が上がり、生活費が下がれば、手元に残るお金は自然と増えます。将来の独立資金や住宅購入資金を貯めたい方にとって、地方転職は有効な選択肢です。
2. ワークライフバランスが取りやすい
地方の薬局は比較的ゆったりした勤務ペースのところが多く、残業が少ない傾向にあります。通勤も車が主流のため、満員電車のストレスから解放されるのも大きなメリットです。
家族との時間を大切にしたい方や、趣味を充実させたい方にとって、地方勤務は魅力的な働き方といえるでしょう。
3. 患者さんとじっくり向き合える
都市部の忙しい薬局では、一人ひとりの患者さんとゆっくり話す時間を確保しにくいことがあります。一方、地方では患者数が適度で、かかりつけ薬剤師として深く関わることができます。
「薬剤師としてもっと患者さんの役に立ちたい」という方にとって、やりがいを感じやすい環境です。
4. 地域医療の中核を担える
地方では医療資源が限られているため、薬剤師一人ひとりの役割が大きくなります。医師や看護師、介護スタッフとの多職種連携を経験できる機会も多く、チーム医療のスキルを磨くことができます。
特に在宅医療では、患者さんの自宅を訪問して服薬指導を行ったり、残薬管理をしたりと、都市部では得られない経験を積むことができます。
5. 自然豊かな環境で暮らせる
海や山、温泉など、地方ならではの豊かな自然環境で生活できるのも魅力です。休日は釣りやスノーボード、キャンプなどのアウトドアを楽しむ薬剤師も多くいます。
子育て世代にとっても、自然の中でのびのびと子どもを育てられる環境は大きな魅力でしょう。
知っておきたい地方転職の4つのデメリット
メリットが多い地方転職ですが、デメリットも理解した上で判断することが大切です。
1. 求人の選択肢が限られる
都市部と比べると、地方は求人数そのものが少なくなります。希望する診療科や勤務形態の求人が見つからない可能性もあるため、条件に優先順位をつけておくことが重要です。
2. キャリアアップの機会が少ない
地方では研修や勉強会の開催頻度が都市部ほど多くありません。最新の医療情報へのアクセスにタイムラグが生じることもあります。
キャリアアップを重視する方は、教育体制が整っている法人を選ぶか、オンライン研修を積極的に活用するなどの工夫が必要です。
3. 交通の便が悪い
地方は電車やバスの本数が少なく、車がないと生活しにくい地域がほとんどです。運転免許を持っていない方や、車の維持費を考えていなかった方は注意が必要です。
転職前に、実際の通勤ルートや生活圏を下見しておくことをおすすめします。
4. 人間関係が濃密になりやすい
地方の職場は人数が少ないため、良くも悪くも人間関係が密になりがちです。アットホームな雰囲気を好む方には向いていますが、適度な距離感を保ちたい方にはストレスになる場合もあります。
転職エージェントを通じて、職場の雰囲気や人間関係について事前に情報収集しておくと安心です。
Uターン・Iターン転職を成功させる5つのポイント
地方転職を成功させるためには、事前準備が欠かせません。ここでは、転職を成功させるための具体的なポイントを解説します。
ポイント1:転職の目的を明確にする
「なんとなく地方がいいかも」という曖昧な動機では、転職後に後悔する可能性があります。以下のような質問に答えられるようにしておきましょう。
- なぜ地方で働きたいのか?
- 年収・勤務条件・生活環境のどれを優先するか?
- 5年後、10年後のキャリアプランは?
ポイント2:現地を必ず下見する
求人票や写真だけでは、実際の生活環境はわかりません。可能であれば転職前に現地を訪れ、以下の点をチェックしましょう。
- 職場の雰囲気、スタッフの様子
- 周辺の買い物環境(スーパー、病院、学校など)
- 通勤ルートと所要時間
- 休日の過ごし方(趣味を続けられるか)
ポイント3:大手チェーンだけでなく地元薬局も検討する
大手チェーン薬局は、全国で給与体系が統一されていることが多く、地方でも年収が大幅に上がらないケースがあります。
一方、地元の中小薬局は人材確保のために高い年収を提示していることが多く、年収アップを狙うなら検討する価値があります。ただし、教育体制や福利厚生は法人によって差があるため、しっかり確認しましょう。
ポイント4:転職エージェントを活用する
地方の求人は非公開のものも多く、自力で探すには限界があります。薬剤師専門の転職エージェントを活用すれば、以下のメリットがあります。
- 非公開求人を紹介してもらえる
- 職場の内部情報(人間関係、離職率など)を教えてもらえる
- 年収や勤務条件の交渉を代行してもらえる
- 面接日程の調整など、煩雑な手続きを任せられる
ポイント5:複数の求人を比較検討する
最初に見つけた求人に飛びつくのは危険です。少なくとも3社以上は面接を受け、条件や雰囲気を比較した上で判断しましょう。
「この求人を逃したら他にない」と焦る必要はありません。薬剤師の有効求人倍率は約3.14倍(2024年9月時点)と高く、地方では特に売り手市場が続いています。
地方転職がおすすめな薬剤師のタイプ
地方転職は、すべての薬剤師に向いているわけではありません。以下に当てはまる方は、地方転職を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。
- 年収アップを実現したい方
- ワークライフバランスを重視したい方
- 患者さんとじっくり向き合いたい方
- 在宅医療や地域医療に興味がある方
- 自然豊かな環境で子育てしたい方
- 地元に戻りたい(Uターン)方
一方、最新の医療情報にアクセスしたい方、専門薬剤師を目指したい方、都会の利便性を手放せない方は、都市部での勤務を続けた方がよいかもしれません。
まとめ
薬剤師の地方転職は、年収アップやワークライフバランスの改善など、多くのメリットがあります。一方で、求人の選択肢が限られたり、生活環境が大きく変わったりするデメリットもあるため、事前の情報収集が欠かせません。
転職を成功させるためには、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 転職の目的を明確にする
- 現地を下見して生活環境を確認する
- 大手だけでなく地元薬局も検討する
- 転職エージェントを活用する
- 複数の求人を比較検討する
「いつか地方に戻ろう」と思っている方も、薬剤師の需給バランスは今後変化する可能性があります。好条件で転職できる今のうちに、情報収集を始めてみてはいかがでしょうか。
よくある質問(FAQ)
Q. 地方転職すると年収はどれくらい上がりますか?
都市部から地方への転職で、年収が100〜200万円アップするケースは珍しくありません。ただし、転職先の法人や地域によって差があるため、複数の求人を比較検討することが大切です。
Q. 未経験でも地方の薬局で働けますか?
多くの地方薬局は薬剤師不足のため、未経験者や調剤経験の浅い方でも歓迎しています。ただし、教育体制は法人によって異なるため、研修制度が整っているかどうか事前に確認しましょう。
Q. 引っ越し費用は自己負担ですか?
地方の薬局では、薬剤師確保のために引っ越し費用を全額負担したり、社宅を提供したりするケースが多くあります。転職エージェント経由で交渉すれば、より好条件を引き出せる可能性もあります。
Q. Uターン転職とIターン転職の違いは何ですか?
Uターン転職は、地方出身者が進学や就職で都市部に出た後、再び地元に戻って働くことを指します。一方、Iターン転職は、都市部出身者が縁のない地方に移住して働くことを指します。どちらも地方で働くキャリアプランの一つです。