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【2025年3月卒】6年制薬学部卒業者の就職動向|薬局・DSは減少、企業職が増加傾向

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2025年3月卒業生の就職動向調査とは

薬学教育協議会は毎年、薬学部6年制学科の卒業生を対象に就職動向調査を実施しています。2025年3月には第十四期生が卒業し、その就職動向の調査結果が公表されました。

今回の調査は、昨年に卒業延期となって今年3月に卒業した1,176人を含む6年制卒業生9,233人を対象としたものです。就職者数は7,646人で、就職率は82.8%と微増しました。

この調査結果は、薬剤師の就職市場の最新トレンドを把握するうえで重要な指標となります。転職を考えている薬剤師の方にとっても、業界全体の動向を知ることでキャリア戦略を立てる参考になるでしょう。

就職先別の詳細データ

保険薬局への就職状況

保険薬局への就職者は男性862人、女性1,687人の計2,549人(27.6%)でした。保険薬局は依然として最多の就職先ですが、全体に占める割合は前回調査から0.5ポイント低下し、2年連続の減少となりました。

この背景には、調剤報酬改定による経営環境の変化や、大手チェーンと中小薬局の二極化が影響していると考えられます。また、調剤併設型ドラッグストアの増加により、薬局単体の求人が相対的に減少している点も要因の一つです。

ドラッグストア(調剤部門)への就職状況

ドラッグストアの調剤部門への就職者は1,672人(18.1%)で、こちらも前回調査から1.5ポイント減少しました。

ドラッグストア業界は店舗数・売上高ともに成長を続けていますが、調剤部門への新卒採用に関しては減少傾向にあります。登録販売者の活用拡大や、調剤併設率が一定水準に達したことで、新規採用のペースが落ち着いてきた可能性があります。

病院・診療所への就職状況

病院・診療所薬剤部への就職は、施設区分によって異なる傾向を示しました。

私立大学付属病院・一般病院・一般診療所への就職者数は男性340人、女性907人の計1,247人(13.5%)でした。就職者数自体はわずかに減少しましたが、全体に占める割合は0.2ポイント上昇しています。

国立大学法人付属病院・独立行政法人病院は男性90人、女性226人の計316人(3.4%)、公立大学法人付属病院・自治体病院・自治体診療所は男性122人、女性259人の計381人(4.1%)で、いずれも前年度とほぼ同水準を維持しました。

病院薬剤師への就職は、チーム医療への参画や専門性を高められる環境として、安定した人気を保っています。

医薬品関連企業への就職状況

医薬品関連企業への就職では、職種によって明暗が分かれました。

開発・学術職への就職者は295人(3.2%)で、前回から就職者数が増加し、全体に占める割合も0.3ポイント上昇しました。同様に、研究・試験・製造職184人(2.0%)と全体比率が0.4ポイント上昇しています。

一方、MR(医薬情報担当者)への就職者は前回から46人少ない164人(1.8%)で、全体比率も0.3ポイント低下しました。製薬業界ではMRの採用を絞る傾向が続いており、この流れが反映された結果といえます。

その他の就職先

一般販売業(ドラッグストアのOTC部門など)は131人(1.4%)、卸売販売業は18人(0.2%)でした。

「就職せず」は281人(3.0%)、「未定(未報告を含む)」は1,089人(11.8%)で、就職しない者の合計1,587人は前回調査とほぼ同水準でした。「進学」は212人(2.3%)と、全体に占める割合がやや増加しています。

4年制学科卒業生の動向

参考として、4年制学科の薬学生調査では、就職したのは221人(19.5%)と前回調査から増加し、進学が871人(76.9%)と全体の割合が増加しました。

4年制学科は研究者養成を目的としているため、大学院への進学者が多数を占めます。就職先としては医薬品関連企業や一般販売業(ドラッグストアなど)が多い傾向にあります。

今後の薬剤師就職市場への影響

調剤薬局・ドラッグストアの採用動向

薬局・ドラッグストアへの就職減少は一時的なものか、それとも構造的な変化なのか、注視が必要です。医療費抑制政策や診療報酬改定の影響、AI・ICT技術の導入による業務効率化など、複数の要因が絡み合っています。

ただし、在宅医療やかかりつけ薬剤師へのニーズは高まっており、対人業務に強みを持つ薬剤師の需要は依然として存在します。新卒採用が減少しても、即戦力となる経験者の転職市場では引き続き求人が見込まれます。

製薬企業への関心の高まり

開発・学術職、研究職への就職増加は、薬学生のキャリア志向の変化を示唆しています。製薬企業は福利厚生が充実していることが多く、専門性を活かしたキャリア形成ができる点が魅力です。

ただし、製薬企業の研究・開発職は採用倍率が非常に高く、競争は激化しています。転職市場においても、DI(ドラッグインフォメーション)や学術、MSL(メディカルサイエンスリエゾン)などの職種は人気が高まっています。

関連トレンド情報

保険薬局への就職が2年連続で減少

影響度:

6年制卒業生のうち保険薬局への就職者は2,549人(27.6%)で、最多の就職先を維持しているものの、全体に占める割合は0.5ポイント低下。2年連続の減少となり、薬局を取り巻く経営環境の変化が影響していると見られます。調剤報酬改定や調剤併設型ドラッグストアの増加が背景にあります。

一言コメント:

薬局への新卒就職が減少傾向にある一方で、転職市場では依然として求人数が多い状態が続いています。特に在宅医療やかかりつけ薬剤師の経験がある方、認定薬剤師資格を持つ方は引き続き需要が高いです。

新卒の薬局就職減少は、必ずしも転職者にとってマイナスではありません。即戦力として活躍できる経験者のニーズは変わらず存在するため、キャリアアップを目指す転職には良いタイミングといえるでしょう。

ドラッグストア(調剤部門)も1.5ポイント減少

影響度:

ドラッグストアの調剤部門への就職者は1,672人(18.1%)で、前回調査から1.5ポイント減少しました。業界全体では店舗数・売上ともに成長を続けていますが、新卒採用に関しては減速傾向。調剤併設率が一定水準に達したことや、登録販売者の活用拡大が背景にあると考えられます。

一言コメント:

ドラッグストア業界は成長を続けていますが、調剤部門の新卒採用は減少傾向です。しかし、調剤経験のある転職希望者には依然として好条件の求人が多く存在します。

特に大手ドラッグストアでは、調剤とOTC両方に対応できる薬剤師を求めており、幅広いスキルを持つ方は転職市場で有利です。セルフメディケーションの推進もあり、OTC医薬品の知識を持つ薬剤師の価値は今後も高まるでしょう。

病院薬剤師は安定した人気を維持

影響度:

私立大学付属病院・一般病院への就職者は1,247人(13.5%)で、就職者数は微減ながら全体比率は0.2ポイント上昇。国立・公立系病院への就職も前年並みを維持しています。チーム医療への参画や専門性向上を目指す学生からの人気が続いています。

一言コメント:

病院薬剤師は専門性を高められる環境として人気がありますが、給与面では薬局やドラッグストアと比べて低い傾向があります。転職を考える際は、年収だけでなくキャリアアップの機会や専門資格取得のサポート体制なども含めて検討することが重要です。

専門薬剤師や認定薬剤師の資格取得を目指す方には、病院での経験は大きなアドバンテージになります。

製薬企業の開発・学術・研究職が増加傾向

影響度:

医薬品関連企業では、開発・学術職への就職者が295人(3.2%)で0.3ポイント上昇、研究・試験・製造職も184人(2.0%)で0.4ポイント上昇しました。一方、MR(医薬情報担当者)は164人(1.8%)と0.3ポイント低下。製薬企業への関心が高まる中、職種間で明暗が分かれています。

一言コメント:

製薬企業への就職増加は、薬学生のキャリア志向の変化を示しています。特に開発・学術職は土日休みや福利厚生の充実など、ワークライフバランスを重視する傾向と合致しています。

転職市場でもDI、学術、MSLなどの求人は人気が高く、競争が激しい状況です。調剤経験をベースにこれらの職種へキャリアチェンジを目指す方は、早めの準備と情報収集が重要になります。

MR(医薬情報担当者)は減少傾向が継続

影響度:

MRへの就職者は164人(1.8%)で、前回から46人減少しました。製薬業界ではMRの採用を絞る傾向が続いており、デジタルツールの活用やリモートディテーリングの普及により、従来型のMR人員を削減する動きが加速しています。

一言コメント:

MR職の採用減少は業界全体のトレンドであり、MRから他職種への転職を検討する方が増えています。MR経験を活かせる職種としては、MSL(メディカルサイエンスリエゾン)や学術、医療機器メーカーの営業などが挙げられます。

また、MRで培った医薬品知識やコミュニケーション能力は、調剤薬局でのかかりつけ薬剤師業務にも活かせます。キャリアの選択肢は決して狭くありません。

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